鼻血が今日のあたしの生きた証。それを否定されたら私はただの血みどろグロテスク厚化粧。そう、お前にとってはただの血でもあたしにとってはそういう血。そういう真理をわかってほしい、わかんないよね。

ともことの思い出では多いけれど、一番記憶に残っている某餃子タウンの話をしようと思う。



まず、その日の私たちはおかしかった。
自担のグッズを買うために人を殺す勢いでいた。


(ちなみにだが、私の当時の自担はバスケ部兼ウザモデルと、高スペック鬼畜眼鏡の彼氏であった。
ともこの自担は人事を尽くす系鬼畜眼鏡である。)


私たちの自担は餃子やデザートとなって、池袋に降臨していた。
私たちはそのコラボを知るや否や池袋に舞い降りた。
私にとってそれが初めての池袋であった。


初めてみた池袋は人間ラブ系アニメの舞台そのものであった。
乙女ロード、情報屋、カラーギャング
そのすべてに私はワクワクした。
新しい何かが始まるような…。
非日常がここにあるような…。
全くもって主人公である帝と同じ気持ちに浸っていた。


目的地のすぐそばであるサンシャインというビルがわからずに迷っていると、中1であった私達にとっては驚くべき光景が目に入ってきた。
普通の街で、乙女たちが歌の王子様のコスプレをしているのだ。
初めて生で見るコスプレに私は舞い上がった。
アキバに通いつめていたと言っても、アキバのオタクたちは慎まやかだった。
コスプレなどの己の身に似合わぬと謙遜して、全身真っ黒なジャージに身を潜めていた。



それがどうだろう、池袋は。



女の子がきゃっきゃうふふとコスプレをしている。
同じ女の子でも、同じきゃっきゃうふふでも渋谷とは全然違う。
そこには優しさがあった。
私の心は、確かに暖かくなった。
あの日、渋谷でできた傷が少しだけ癒えた気がしたのだった。


その女の子達に惹かれるようについて行くと、偶然にもサンシャインのすぐ近くまでたどり着いた。
彼女らは私たちを導く存在だったのだろう。



無事、ナ●コナンジャタウンに着くと、私たちは自担の姿を探した。
トルコアイス屋で私の自担は旦那とアイスになっていたので、早速私はそれを買った。
そして、自担の顔をもいで、自担の旦那の体に密着とかさせて遊んでいた。
そしたら、アイスはドロドロに溶けて最終的にはなんだったかよくわからないものになっていた。
時の流れとは残酷なものである。


ともこの方はというと、なぜか自担のアイスを買わずに私の自担のパフェを食していた。




たなか「お前、緑間どしたよwwwww」



ともこ「こっちのがうめぇから」



たなか「そっか」




ともこは欲求に実直な人間である。


それらの写真を誰も待ち望んでいないSNSにあげるために散々撮りまくったのち、私たちは速やかにデザート広場から餃子タウンへ移動した。

今度こそともこは自担の食品を買った。
ともこが買ったのはサラダピザとおしるこがセットになってるという、なんだか腑に落ちないものだった。




たなか「今度は自担買ったんだな」




ともこ「ヘルシーだから」




こいつに自担への愛なんてない。
ともこの薄愛さをしみじみ感じながら、私は2人の担当のためにお金を使いまくった。
どこで使うのかわからない缶バッジのために、両替機に6回ぐらい向かった。
私はぐちぐち言いながらガシャポンを回していたが、ともこはただ淡々とガシャポンを回していた。恐怖を感じた。



ただ、そんなともこにも感情はあった。
自担の缶バッジが出た時、口角を地味にあげて笑ったのだった。恐怖だった。







餃子もスイーツも満喫した私たちはスピーディにナム●ナンジャタウンを出ると、辺りはもう夕暮れ時だった。
デュラ●ラ!!!を見ていた私としては、首なしライダーを見れるんじゃないかと期待したが、ともこが結構ガチめに帰りたがっていたので私は帰路を急いだ。


そう、私はまだ知らなかったのだ。

乙女ロードの可能性に、まあ触れてすらいなかったのだった。



家に帰ってから、乙女ロードの存在を知った私はすぐにともこに連絡を入れた。
ともこは電話越しで微笑したのち、了承した。怖かった。